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発見3 [癌と経過]

細胞診の診断結果は「悪性」だった。

家族の同行がなくてよかった。己を横に置いて、家族の受けるショックにも対処せねばならなかっただろう。そうすれば医師の説明を聞く際にきっと隙が出来ただろう。一人だったお陰で、自分の事だけを考えればよかったのは幸いだった。


 ここまでの検査では、乳房表面からは小さな粒としか思えなかった腫瘤だったが、今回3Dで見せられた映像では、腫瘤は胞を破り乳房深部にむけて浸潤し始めているのが確認できた。血流やリンパに乗ると転移の可能性がある。ホルモン受容体のみ陽性のため抗がん剤投与はなされない。抗がん剤の大変さは身近に知っている。私の年齢と体力では回復に長い時間がかかったであろう。これが不要というのは大きな救いだった。その後も淡々と説明が続けられ、私は黙って聞いていた。既に治療のスケジュールは決まっており、私はそのレールに乗って運ばれていくだけなのだ。

 引き続き告げられた手術日は その日より三週間後であった。感情が途切れたまま聞いていた頭の隅に、小さな疑問符が立った。私は尋ねた。

「先生、手術まで日数があるという事は「初期」ですか?」

「はい。」

間髪入れず力強く担当医は仰った。

あぁ、早期発見なのだ。高確率で助かるのだ。

漂う気持ちに錨がおりた。

 手術は患部の摘出と、リンパ節転移の有無を調べるために腕の付け根付近の切開があるので都合二か所を切るという。その場でリンパへの転移が見つかればリンパ節ごと切除。のちの切除部位の精密検査で転移が見つかれば、再度手術になるという。乳房を切ることは惜しくない。少しでも存命率の高い方でお願いしたいと前のめりで全摘を望んだが、今回のケースでは生存率は「変わりなし」ということだった。それなら、術後の負担が少ない方がいいかも知れない。自ら言い出しながら迷い始めた私にドクターは、「次回、ご家族を交えて説明する日があります。その日までに決めておいてくださいね。」と猶予をくださった。(実際には,最初にドクターの仰ったように温存で行われた。)


 手術までにいくつかの精密検査があるので、その予約を済ませ、術後必要な患部保護ベルトを購入すると病院を後にした。ひとり駐車場に戻り、時系列でしなければならないことを頭の中に並べ、エンジンをかけた。することは沢山あったが、私は何よりも先に美容院に行き髪を切った。抗がん剤は使わないので副作用による脱毛はないとはわかってはいたのだが。
 今から思うと、これから始まる治療に対する「覚悟」だったのだろう。
 行きつけの美容院の鏡に映る、強張った己の顔がそれを物語っていた。


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